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ちょうど5年前の2004年春、それまで乗っていたフォルクスワーゲンが不調になったこともあり、免許取得から15年を経て初めて新車なるもの、平成になってからのクルマを購入しました。
車種は日産キューブキュービック。小さな子どもを持つ家庭には手ごろなコンパクトカーでした。
さて、納車されてしばらく経った頃、私は運転中に強い違和感を覚えました。
それは、交差点での右左折時に横断歩道の歩行者を見落としやすいということです。
大きく上体を横に振らなければ見えないのです。
これに慣れるのにしばらくかかりましたが、考えてみると現在のクルマは皆同じ運転スタイルでないと斜め前方が見えにくい特徴があります。
何が起因しているのでしょう。
それは成人男性の二の腕ほどもある見るからに太く頑強なAピラーのせいでした。
交通事故死亡者数が現在の2倍近くあった17年前頃から、国内メーカー各社は安全対策としてエアバック、ABSなどの装備に加え、車体全体の強度確保のための開発に取り掛かりました。
1995年頃から市場に登場した車体構造で、トヨタでいうところの「GOA」、日産でいうところの「ゾーンボディ」です。
これは、構造的にも強固な車体ですし、骨格的にも画期的な性能の向上をもたらし、現在に至っています。
その特徴の例が「Aピラーの極太化」、「前ストラット上部とAピラー下部との接近」です。
車体前部の衝突事故にはこれは効きます。
そしてこれはもうひとつの副産物を生みます。
操縦性の向上です。
特に「前ストラット上部とAピラー下部との接近」は画期でした。それまではそんなことをしたら、クルマは格好悪くなるとデザイナーも二の足を踏んでいたのですが、折からのミニバンブームもあり「格好よく」まとめる技量を得、また、消費者側の好みの変化にうまく合わせることができたのですから。
さて、転じてS30Z。まぁ当時のクルマ、S130Z、スカイライン等々。みーんな「前ストラット上部とAピラー下部と接近」してません。
おまけにAピラーは小柄な女性の腕より細いです。
こんなもん「操縦性の向上」にひとつも結びつきません。
つまり、高速走行時にハンドルを切ったとき、ワンテンポ遅れてクルマが向きを変えるといった、普通のドライバーには非常に「運転しにくい」クルマだったということです。
鉄のモノコックで構成されているとはいえ、力点(ストラット上部)と作用点(Aピラー下部)の距離が遠くなるほど鉄は大きくたわみます。
できることならこの間を縮めて、たわみを小さくしたい。
最近のランエボもGT-Rもそのように作られています。
同じ直列6気筒を搭載したクルマ、BMW3シリーズはパッケージングの改良等でその距離を(FRにしては)縮めて、操縦性において高い評価を受けています。
しかし、設計が40年前のS30Zはそうはいきません。力点と作用点ははるかに離れています。
おまけに何度も書きますがド中古です。鉄もなまっているでしょうから、ハンドリング云々おっしゃられる方は、ここを重点的に補強されるのも手かもしれません。
Aピラーの下部からその下の鉄骨、そしてストラット上部をつなげる三角形のアングルを設けるとか、Aピラーに沿った、そしてできればピラー止めを施したロールゲージの装着とか。
でも、溶接は繰り返すと鉄は歪み、また錆の発生も心配になってくるんですよね。また部分的な補強だけでは操縦性の向上が得られにくいのも事実なのです。補強はクルマ全体を見通して行うものですから。
答えはありません。今現在S30Zを所有され方々は皆さんは金額や手間等の折り合いをつけられて乗ってられると思います。
そうです、乗りにくくたっていいじゃないですか。それがあなたの愛したS30Zならば。
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