究極のエンジンを探して(その2)
   ― How to build LYクロスフローヘッド ―

 LYクロスフローヘッド(以下、LYヘッド)を作りたい?


 そんなぁ。


 何の目的で?―。前述しましたが、同じお金をかけるなら今のL型チューンの方が速いと思いますよ。

 レアパーツだから?―。まぁ希少性は認めますが、そんなもの再生産されたらいっぺんに価値が吹っ飛びます。

 『LYヘッドは速い』ということを証明するため?―。それならわかります。ただし、そのためには1基や2基では足りません。

 最低でも50基、できれば100基程度量産してプライベーターからプロのチューナーまでいろいろな人の手に届くようにしておく体制が必要になります。

 そうしてさまざまなテストを繰り返さないと、速いエンジンは積み上げられないのです。


 レーシングエンジン以外で、世に広まり、プライベーターの手により高性能を誇ったエンジン。

 例えば、ポルシェ911の空冷エンジン。

 例えば、マツダRX-7のREエンジン。

 例えば、日産フェアレディZのL型エンジン。


 どれもプライベーターに愛され、ヨーロッパや北米で、L型は特に日本でレースに使われていたエンジンです。


 その理由は量産品だったから?―。えぇ、そうです。 

 プライベーターが手に入れやすかったから?―。えぇ、そうです。


 プライベーターが速いエンジンを作るには大量生産されたものでなければならないのです。失敗してもすぐ代替品が見つかりますからね。


 失敗を恐れて、希少性ゆえに大事に扱ってもLYヘッドの速さにはつながらないでしょう。

 運良くLYヘッドを生産できる『型』があったとして、やることはまだまだあります。

 高性能、高耐久性を望むなら、昔のままのLYヘッドを作ってもしょうがないじゃないですか。

 例えば特徴のシーリングリング。燃焼室の機密性確保として当時は使われていたのでしょうが、メタルガスケットのある現在ではブロックを傷めるとして使われない技術です。これはなくします。

 バルブガイド。これも最近の素材のものにすれば、バルブのがたつきの心配もなくなるでしょう。

 シートリング。現在のR35GT-R用の素材を使えば耐久性は抜群でしょう。高性能なエアクリーナーをつければ、10万キロはタペット調整から開放されるかもしれません。

 カムシャフト。これはメイク&トライですね。今あるL型の高性能のカムのプロフィールを参考に試していくしかありません。


 どのくらいの金額がかかるのでしょう。

 何人ぐらいLYヘッドを手に入れたい人がいるのかな。

 全国にどれだけLYヘッドに恋焦がれている人間がいるのかな。

 高みを得るための情報をやり取りできる人間同士の信頼関係も必要です。


 最近はそんなことを考えていたりします。


 あ~ぁ、愚の骨頂。




2009.05.16